「コンビニ人間」レビュー:生き辛さに打ち勝つとはこういう事である

2016年に芥川龍之介賞を受賞した「コンビニ人間」を読みました。地味に生きつつ実は超破天荒な主人公の女性に非常に感心してしまいました。

 

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「コンビニ人間」作者プロフィール

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画像引用:りっすん

 

村田沙耶香

1979年8月14日生まれ

千葉県出身

玉川大学文学部卒業

2003年に『授乳』でデビュー

 

私と同年代の方です。写真を見るとおきれいな方!骨太なストーリーからは想像できないかわいらしい容姿の作家さんでした。

 

村田氏のツイッターアカウントはこちら

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コンビニ人間のあらすじ

コンビニの店員として働く30代半ばの独身女性の古倉恵子さんが主人公。

 

子供の頃からいわゆる変人で「恋愛?なにそれ美味しいの?友情?え、全然興味ない」という不思議なパーソナリティを持ってるんですね。

 

古倉さんは空気も読めなければ善悪の判断も曖昧な、おとなしめながらもとても危険な純然たるサイコパス女性です。

 

そんな古倉さんは、大学生の時にコンビニ店員としてアルバイトを始めました。

 

コンビニを円滑に運営することに天職を見出した彼女はそのまま30代になってもずっとコンビニ店員を続けるのですが、年齢による体の衰えを感じ始めます。

 

ある日古倉さんの働くコンビニに超絶キモダメンズな白羽君という男性がアルバイトとして入ってきました。

 

ひょんなことから二人は同棲生活を始めることになり、古倉さんの生活が一変していきます。

 

「コンビニ人間」の感想

以下、ネタバレを含みますので見たくない方はここでさようなら!

 

 

 

 

純粋な感想を書きたいので、他の人のレビューや小説の解説など一切読まずにこのレビューを書いてるので、もしかしたら既に議論が終わってる話なのかもしれませんが。。。

 

タブーを恐れずにはっきりと言っちゃうと、主人公の古倉さんって要するにおそらくアスペルガーな女性なんですよ。

 

私は発達障害についてあまり知らないので滅多なこと言うもんじゃないのかもしれませんが、アスペルガーのチェックポイントなるものをネットで見つけたので参考にしてみました。

 

アスペルガーについての参考サイトはこちら

 

  • 相手の反応や状況を察することが難しい
  • 発言が一方的

 

  • 言葉の裏の意味や曖昧な表現がわからない 
  • 特定のものやことがらにこだわる

 

  • 同じ動作を繰り返す

 

と、アスペルガーのチェックポイントはこんなところらしいんですが、どれも全て古倉さんのことですね?と言いたくなるあてはまりっぷり。

 

古倉さんがアスペだな、と思う出来事

物語の序盤に、古倉さんの小学校時代のエピソードが語られるんですが、ここで既に古倉さんのアスペでサイコな人格がはっきりとわかります。

 

古倉流、男子のけんかの仲裁方法

古倉さんが小学校1年生の時、クラスの男子のとっくみあいのけんかを始めて、女子の一人が「誰か止めて!」って叫びました。

 

すると古倉さん、スコップを持ってきて一人の男子の頭をぶん殴ったんですよ。周りの子どもたちは阿鼻叫喚。

 

そんな中、”もう一人の男子の活動も止めようと”スコップを振り上げたところで先生に止められました。

 

古倉さん曰く、「止めろというから、一番早そうな方法で止めてみた」そうです。

 

ザッツ殺人未遂。

 

 

先生を黙らせろ

またある時は、女性教師が教壇でヒステリーを起こし、クラスの生徒たちがパニックを起こしたんですね。

 

先生が教卓を出席簿でガンガン叩くのが怖くて泣く生徒たちが「先生ごめんなさい!やめてください!」って叫ぶんです。

 

そこで古倉さん、先生を止めるという使命に追われ、彼女なりのベストな方法で先生を黙らせることにしました。

 

その方法とは

 

先生のスカートとパンツをズボッと下ろすという手法でした。

 

若い女の先生はわっと泣き出しました。しかしヒステリーはやめてくれたので古倉さんの目的は達成です。

 

こちらも立派な軽犯罪。

 

いやー、恐ろしいですね。アスペなのもそうですが、サイコっぷりも恐ろしいです。

 

普通の人を装う古倉さん

こんな調子で育った古倉さんは、自分が一般社会においてヤバイ存在だということは自覚して成長します。

 

大人になったときには、自分のヤバさが人を怖がらせたりしないように、”普通の人間”でいられるように彼女なりに細心の注意を払って生活します。

 

でも、周りの人達は当然気が付きますよね。普通のふりをしてるけど、実は相当やべー奴だって、みんな気がついてても気づかないふりをしてます。

 

 

古倉さんのなにがいけないの? 

全く無駄がない、まるでロボットのようにコンビニ業務を完璧にこなす古倉さん。

 

お客さんの小さな仕草や動きも敏感に感じ取って、次に相手が何を求めてくるのかを察して素早く無駄なく、しかしプレッシャーを与えない完璧なタイミングで提供する。

 

商品は客の導線を考えて、取りやすいよう、目に付きやすいよう、売れるように計算して、やはり完璧に陳列します。

 

古倉さんはそんなコンビニ業務を完璧にこなすために寝不足にも気をつけて生活リズムも整えるんですよ。私生活までコンビニ業務に捧げてる。

 

それだけ聞いたら素晴らしいことじゃないですか。責任感があってまじめで。

 

じゃあ何が問題買って、古倉さんがそれを18年も何一つ変わらずに続けてるということ。

 

18歳の時に近所にオープンしたコンビニでアルバイトを始めてから、古倉さんは36才になってもまだそこにいたんですね。店長も店員もお客さんもみんな入れ替わってるのに、古倉さんだけはずっといる。

 

女性は18才から36才の間には就職、結婚、出産、などの大きなイベントが起こるのがまあ、一般的ですよね。就職も結婚も出産も、実現しなかったとしても、自然とそこを目指して生きるのではないでしょうか。

 

しかし古倉さんはコンビニ人間として頑なに同じコンビニで働き続ける。

 

彼女自身も繰り返し言ってたけど、世間の皆さんは一般的なレールの上を歩いてない人を見ると不安定になるみたいなんですよ。

 

どうしてそんなことしてるの?事情があるの?事情があるなら仕方がない。と。

 

でも古倉さんには事情なんてないんです。ただ、こういう風にしか生きられないだけ。

 

古倉さんの人生の曲がり角

そんな古倉さんも年齢のせいか、体力的にも精神的にもさすがにつかれてきちゃうんですね。

 

なんで結婚しないの?結婚してないのになんでずっとコンビニでアルバイトしてるの?

 

っていう家族や世間の質問に疲れちゃうんです。

 

そんな時、キモいクズ男の音羽君がコンビニに現れます。古倉さんてば、この音羽君を利用して結婚すれば、世間からのめんどくさい質問から逃れられるんじゃないかって、これまたぶっ飛んだアイデアを元に、音羽君と一緒に暮らし始めます。

 

一方音羽君のほうも古倉さんを利用して、彼女に労働をさせて自分は家に引きこもります。

 

当然そんな関係はうまく行くはずもないので最後は絶望的に破綻するんですが。

 

 

生き辛さに打ち勝つとはこういう事である

最後の最後、世間の期待に答えてめんどくささから逃れようともがいてみた古倉さんでしたが、結局自分はコンビニ人間なんだということを受け入れて、吹っ切れた後にまたコンビニ人間に戻るんですよ。

 

これが私は「イイネ!」ボタンを押してあげたい気持ちでした。

 

こういう、世の中の皆さんが敷いた「一般的なレール」っていうのに乗れない人たちを生きづらくさせるのは「一般的なレール」を押し付ける世間の皆さんなんですよ。

 

不調和音を嫌って古倉さんのように生きてる人に偉そうに説教したりね。

 

そういう世間を吹っ切って、コンビニ人間に戻った古倉さん。きっともう、一般論を押し付けてくる世間の言葉に惑わされることはないんじゃないでしょうか。

 

これからは、もう一切人の話に耳を傾けず、自分らしくコンビニ人間として生きていく。それが彼女の人生なんですね。幸せかどうかなんてそんな基準はいらないんですよ。自分が好きなように生きるのが人生。

 

そうやって世間を吹っ切って変人として生きてるっぽい人たちがよく「月曜から夜ふかし」の街頭インタビューに出てくるけど、みんな幸せそうだもの。生きづらさを克服してる感じがしてとても好きです。

 

「一般的な幸せ」の枠の中にいなきゃいけないなんてことはないんですからね。

 

 

でも古倉さんが家族だったら困る

古倉さんはサイコパスの要素を多分に含んでるので、もし彼女が自分の娘だったらと思うと、世に放つのが不安ですね。

 

夜中にコンビニに泥酔したお客さんが入ってきて、怒鳴ったり暴れたりした時に、他の店員さんが「出てってください!」って言ったりしたら、古倉さんまた裏からスコップ持ってきて泥酔客をぶん殴って外に転がしたりしないかってね。

 

大人になってそれやったらお縄じゃないですか。さすがに彼女も大人になって善悪の判断はバッチリですかね?

 

さいごに

コンビニ人間の古倉さん、いいキャラクターです。世間の目を気にして生きづらさを感じてる時、コンビニ人間の彼女が勇気づけてくれそうな気がします。

 

 

 

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